会社を辞めて個人事業主になってから、「そういえば健康診断がなくなったな」と気づき、漠然と不安になった。
会社員の頃は、毎年の健康診断が「安心の証」のように思い込んでいた。
重大な病気――たとえばがん――を早期発見できなくなるのでは、と焦って、自費で受けるか、自治体の補助があるかを調べようとしていた。
けれど、この本を読んで、考えが少し変わった。
健康診断は決して「慈善事業」ではなく、医療機関にとっては営利を目的としたビジネス。
つまり、受けたい!と沢山の人々に思ってもらうよう工夫する部分(不安を煽る要素)も、多少あるのでは。
まず、健康診断で検査する「がん」は5種類に限られており、それ以外の臓器にできるがんは見逃される。
海外の研究では、「毎年健康診断を受け続けた人のほうが、むしろ死亡率が高かった」という結果すらあるという。
医師自身が健康診断を受けないというのも、納得できる話だ。
さらに、人間ドック学会では「安全性を高める」という名目で、基準値を低く設定し、「異常者」を増やして翌年も受診させる仕組みがある。
実際、がん検診でがんと診断される確率は、大腸がんで1万人に16人、乳がんで1万人に23人。
検診によって命拾いする人がゼロではないにせよ、限りなく少ない。
一方で、イギリスの研究によると、日本のがん患者の約2.3%はレントゲン検査の被ばくが原因だという。
「ごく少数の患者を救うために、別のがん患者を生み出している」という現実を知ると、単純に“安心のため”とは言い切れない。
新卒以来20年以上、何の疑問も持たずに「健康のために正しいこと」とやみくもに信じて毎年受けてきた健康診断。メリットもデメリットもあるはずだ。
この本を読んで初めて、「健康診断幻想、メリットだけを信じる自分」に気づけた気がする。
本書ではこのほかにも、
- 「薬は効く」という幻想
- 「病院に行けば安心」という幻想
- 「難しい病名がつくと安心する」診断幻想
- 「ランキング上位なら名医」という名医幻想
- 「高齢者も努力次第で元気で長生きできる」高齢者医療幻想
など、医療をめぐる“思い込み”を次々と問い直している。
私自身、子宮の病気で処方され、1年以上飲み続けている薬についても、「本当に必要なのかな?」と改めて考え始めた。
お医者さんだから正しい、薬だから正しい、病院だから正しい。
そうやって何でも鵜呑みにするのではなく、
「そういう考え方もある」と受けとめる視点を持ち続けたい。
信じすぎず、疑いすぎず。
“自分の感覚で考える力”を、少しずつ取り戻していけたらと思う。