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なぜ日本の大河ドラマは男性中心なのか?vs韓国ドラマ

はじめに

韓国の歴史ドラマを観ていると、しばしば女性が黒幕だったり、政治のキーパーソンとして描かれる場面に出会います。王妃、尚宮、大妃といった女性たちが、物語の軸を握っていることも少なくないです。

一方、日本の大河ドラマはどうでしょうか?多くの場合、主人公は武将や政治家など、歴史に名を残した男性たち。女性は「支える者」「愛される者」として描かれることが多く、表舞台で歴史を動かす存在としてはあまり登場しません。

1. 歴史の「舞台設定」が違う

韓国の時代劇は、王宮を舞台にした権力闘争や陰謀劇が中心になることが多く、そこには当然、王妃や側室、大妃といった女性たちが関わってきます。実際に、朝鮮王朝時代には王の母(大妃)が政治に強い影響を持った例も多く、女性たちの存在感は大きかったのです。

一方、日本の大河ドラマは、戦国時代や幕末など、「戦いの時代」に焦点が当たりがちです。そこでは武士が主人公となり、戦や政治の表舞台に立つのはほとんど男性。舞台設定の時点で、男性中心にならざるを得ない構造が出来上がってしまいます。

2. 歴史を「誰の物語」として語るか

韓国のドラマは、時に大胆に歴史を再構成し、「この裏にこんな女性の力があったのでは?」という視点で物語を組み立てることがよくあります。史実に基づきながらも、現代的な解釈を加えることで、女性たちに焦点を当てたドラマが生まれるのです。

一方、日本の大河ドラマは「教養番組」としての色が濃く、比較的史実に忠実であろうとする傾向があります。結果として、「有名な歴史上の人物=男性」が中心となり、語られるのは「男性による歴史」になりがちです。

3. 脚本家と視聴者層の違い

韓国では女性脚本家の活躍が目立ちます。彼女たちが描く歴史ドラマは、感情や人間関係を丁寧に描いたものが多く、女性視聴者に支持されています。視聴者層を意識した脚本作りの中で、自然と女性が主役になる作品が増えてきました。

一方、日本では、かつては男性脚本家が中心で、視聴者も年配男性が多いとされていました。ただ、近年では『おんな城主 直虎』『篤姫』『光る君へ』など、女性主人公の大河も登場しており、少しずつ変化の兆しは見えています。

4. 韓国歴史ドラマに見る「語られる女性たち」

韓国の歴史ドラマでは、女性が物語の中心となる作品が多く制作されています。そこでは、王妃や側室といった役割にとどまらず、国家を動かす政治家、医師、法の担い手、芸術家として活躍する女性たちが生き生きと描かれます。

以下に、代表的な作品をいくつかご紹介します:

  • 『善徳女王』(2009年)
     新羅初の女性君主・善徳女王が政敵との戦いを経て王として立つまでを描く。女性が堂々と王として君臨する姿が話題に。
  • 『宮廷女官チャングムの誓い』(2003年)
     実在した女性医官チャングムの物語。料理と医術の才能で王の信頼を得る姿が、努力と知恵の象徴として描かれました。

  • 『ファン・ジニ』(2006年)
     妓生(芸妓)として芸術を極め、社会の中で自立して生きる女性の姿を描いた感動作.

  • 『トンイ』(2010年)
     身分の低い宮女から王の側室となり、のちに英祖の母となる女性。知恵と行動力で運命を切り開く姿が印象的です。

  • 『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』(2021年)
     戦士として生きる王女の姿を描く。自分の意志で未来を切り開く女性像は、現代的なヒロイン像とも重なります。

  • 『オクニョ 運命の女(ひと)』(2016年)
     監獄で生まれ育ち、法律を学び民を助ける女性の物語。社会正義を担うヒロイン像が強く描かれます。

これらの作品では、女性たちは単なる「陰の存在」ではなく、歴史の主役として描かれています。現代の視点から、女性たちを「歴史の語りの場に呼び戻す」という意味でも、非常に象徴的です。

5. 日本の女性・男性たちが抱く理想女性

韓国の歴史ドラマに登場する女性たちは、ただの脇役ではなく、自ら考え、動き、時に歴史そのものを動かす存在として描かれています。

一方、日本の大河ドラマでは、依然として男性中心の視点が強く、「語られなかった女性たち」は影の存在になりがちです。しかし、『篤姫』や『光る君へ』のような作品が登場してきた今、少しずつ語り方の変化も始まっているのかもしれません。

日本の女性・男性たちが抱く理想像は、どこかで「ドラえもんのしずかちゃん」や「タッチの南ちゃん」を望んでいる部分がまだまだあるかもしれません。

しずかちゃんや南ちゃんは、可愛く優秀で能力もある。けれども、「のび太さん頑張って」「たっちゃん、南を甲子園に連れてって」と、応援するばかり。入浴をのぞかれて恥じらったり、果てはのび太(たっちゃん)の妻になるという一歩下がった存在に留まった描き方には、たとえ能力があっても発揮しないのが、女性の美徳として賞賛される、という日本文化の表象でもあります。

それでも、自立したキャリアウーマン像としての韓国歴史ドラマが人気の理由は、現代の日韓女性たちが共感し、希望を感じる要素がそこにあるからだと思います。自らの力で歴史を動かす女性たちの姿に勇気づけられ、観る人々に影響を与え続けているのでしょう。

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