社会構成主義の視点から考えると、断捨離が難しい理由は単に「物が多い」からではなく、それらが持つ「社会的な意味」や「自己定義」が深く関わっている。具体的には次のような理由が挙げられる。
① 物が持つ社会的意味、過去にしがみついているから
- 「昔の自分」「昔の栄光」「過去の思い出」「家族や友人からのプレゼント」や、その物自体以上に、そこに込められた思いや記憶が重要になり、モノに“過去の自分”を投影していることが多い。
- 捨てることは、それらの関係や記憶をも切り離すことになり、心理的な抵抗が生まれやすい。
② 不安や恐れを抱えているから
- 「捨てたら困るかもしれない」
- 「あとで必要になるかも」
➡ これは未来に対する不安が根底にあります。 - 過去にハマってた趣味グッズなど。いつかまた使うかもと思って手放せない。
③ 社会的評価の影響、自分の価値を「モノ」で保っているから
- 「いい服」「高い家電」「たくさんの本」=自分の価値と感じている
- 「高級ブランドはステータスの象徴」、「成功した証」といった社会的な評価が強い物は、手放すことに対する心理的なハードルが高くなる。
- 「物がその人の価値を示す」という社会的な物語に縛られることで、断捨離が難しくなる。
これは、自己肯定感の問題に関わっています。
④ 誰かの価値観に縛られているから
- 「もったいない」と言われたから
- 「捨てるなんて失礼」と育てられたから
- 「整理できない=だらしない」と思われたくないから
親・会社や学校・パートナーの期待やルールが心の中に残っていることも…
⑤ 消費文化とアイデンティティ、「何が大切か」が分かっていないから
- 現代社会は大量消費を前提とした文化であり、「持つことが豊かさ」という価値観が根強い。
- 物を捨てることは、ある意味でその文化に反する行為であり、無意識に抵抗感が生まれる。
- 人はしばしば、持っている物によって自分自身を定義する。趣味や仕事に関するアイテム、思い出の品などは、その人のアイデンティティの一部とみなし、それらを捨てることは、過去の自分を否定するように感じられる場合がある。
→モノが多い人ほど、「本当に必要なもの」が分からなくなっていることも
⑥ 物語の終わりへの抵抗
社会構成主義的には、物は単なる物体ではなく、それにまつわる物語の象徴でもある。
- 卒業アルバム: 学生時代の友人や青春の思い出が詰まったアルバムは、過去の自分を象徴しており、その物語を閉じることは難しい。
- トロフィーやメダル: 過去の成功や栄光を象徴する物は、手放すことでその物語に終止符を打つことになる。
これらは、その人の人生にとって重要な章を占めるため、捨てることは「その物語の終わり」を意味し、感情的な抵抗が強くなる。
断捨離は、単なる物の整理以上に、「自分の物語をどう捉えるか」という深い心理的な問いかけが求められる行為だと言える。
「捨てる技術」ではなく、「選ぶ力」そのもの。