Magic Tree Houseシリーズには、ジャックとアニーの冒険物語だけでなく、その冒険先で出会う人物や出来事を歴史的事実に基づいて解説する「Fact Tracker(ファクト・トラッカー)」シリーズがあります。物語を読んだ後に、その背景をより深く学べる仕組みになっていて、多読にもぴったりの教材です。
今回ご紹介する『Heroes for All Times』は、その第28巻。テーマは「ヒーロー」。ただしここで描かれているのは、スーパーパワーを持つ架空のキャラクターでもなければ、現代の日本で“ヒーロー”としてよく語られるような大谷翔平選手のようなスポーツスターでもありません。
Our favorite heroes don’t work to have millions of dollars or admiring fans. They believe that there are causes bigger than themselves...
この一文が象徴するように、本書が取り上げるのは、「平和」「正義」「平等」といった自分より大きな目的=causeのために行動し、時には命さえかけて社会を変えていった実在の人物たち。そうした「真のヒーロー」たちの姿を、子どもにもわかりやすい言葉で紹介してくれます。
語学だけでなく、世界の歴史・思想・人間の勇気に触れることができる一冊――『Heroes for All Times』、英語と世界をつなぐ入口として、ぜひおすすめしたい一冊です。
紹介されている6人のヒーローたち
1. フローレンス・ナイチンゲール(1820–1910)
「白衣の天使」として知られる彼女は、クリミア戦争(Crimean War)中の野戦病院で衛生状態を改善し、多くの命を救いました。さらに看護教育を整え、女性が専門職として社会的に認められる道を切り開いた、医療と女性の地位向上のパイオニアです。
2. ハリエット・タブマン(約1822–1913)
奴隷として生まれ、自ら逃げて自由を得た後、「地下鉄道」の案内人として70人以上の奴隷を脱出させました。勇気と信念でアメリカの奴隷制度廃止に貢献した、自由の象徴です。
3. スーザン・B・アンソニー(1820–1906)
アメリカで女性に参政権がなかった時代に、その獲得を目指して活動しました。「投票する権利は人として当然あるべきものだ」と訴え、女性解放運動の礎を築いた人物です。
4. マハトマ・ガンディー(1869–1948)
イギリスによる植民地支配に苦しむインドを、非暴力の「市民的不服従(civil disobedience)」運動で独立へと導きました。「行動こそが変化を生む」と信じ、身をもって示した世界的リーダーです。
5. マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(1929–1968)
アメリカの公民権運動を象徴する指導者。「I have a dream」のスピーチで有名。人種差別撤廃を目指して非暴力で闘い続け、アメリカ社会を大きく変える原動力となりました。
6. ジョン・ミューア(1838–1914)
自然の美しさと大切さを訴えた自然保護運動の先駆者。アメリカの国立公園制度設立に尽力し、自然と人間が共に生きる未来を描いたビジョナリーです。
読む前に知っておくと便利な英単語
英語に少し不安がある方も、以下の単語をおさえておくと読みやすくなります。
英単語 | 意味 |
---|---|
cause | 大義、信念 |
calling | 使命、天職 |
abolitionist | 奴隷制度廃止論者 |
suffrage | 参政権、選挙権 |
civil disobedience | 市民的不服従 |
segregation | 人種隔離 |
nonviolence | 非暴力 |
hygiene | 衛生 |
testimony | 証言、体験談 |
legacy | 遺産、影響 |
outrage | 社会的不正や暴力に対する怒り |
Crimean War | クリミア戦争(ナイチンゲールの活躍) |