Penguin Readers Level 5『The Firm』(1997年出版) を読みました。
原作はジョン・グリシャムによる1991年のベストセラー小説で、1993年にはトム・クルーズ主演で映画化もされた有名な作品です。
今回読んだのは英語学習者向けに語彙制限されたグレイデッド・リーダー版。難しい単語がほとんど出てこず、読みやすいのに、大人向けの本格的なミステリーを味わえるのが魅力でした。
児童書中心になりがちな英語多読の中で、この本はひと味違います。
「お金を稼ぎたい」という野心、法律事務所の裏側、裏切り、殺人、マネーロンダリング、マフィア、そして少しセクシーな場面まで――児童書にはない大人のストーリー展開を楽しめました。
さらに面白いのは、1990年代という時代背景。コピーは何千枚も紙でとり(クラウドではなく)、やりとりは電話(スマホではなく)という描写が出てきます。出版から四半世紀が過ぎ、テクノロジーが進化し、犯罪の方法まで変わってきたことを実感しました。
主人公はアングロサクソン系で、大学を優秀な成績で卒業し、若くして法律事務所で何千万も稼ぐという「野心の塊」のような人物。今読むと少し古さを感じますが、それこそが90年代を象徴する価値観なのかもしれません。
「電話」を実際に使ったことのない世代が増える今、この作品の世界観は少し想像しづらいかもしれませんが、英語多読用の教材としてだけでなく、90年代アメリカの空気を感じられる大人向けミステリーとしてもおすすめです。