Lois Lowry の Number the Stars は、第二次世界大戦中のデンマークを舞台にした物語です。主人公は10歳の少女 Annemarie。ナチスによるユダヤ人迫害のさなか、ユダヤ人の親友 Ellen とその家族を守るため、彼女自身も危険に身をさらします。
「ナチスがユダヤ人を迫害した」というのは、私も教科書で習いましたが、デンマーク人の視点から考えたのは初めてでした。物語の中で、Annemarie の父は彼女にこう説明します。
デンマークは国が小さく、大国ドイツと戦えば多くの兵士の命が奪われる。だから国王が国民を守るため、早々に降伏を決めたのだ、と。そして、国が誇りをかけて建造した戦艦も、ナチスに奪われて悪用されないよう、自ら壊したのだ、と。
そんな話を聞いた Annemarie は、本質を突く問いを投げかけます。
「じゃあ、どうしてノルウェーやオランダはナチスと戦ったの?スウェーデンは?」
子どもの口から出る素直で力強い疑問や言葉が、この物語全体のテーマを象徴しています。
さらに、彼女は父にこう語りかけます。
“Papa, do you remember what you heard the boy say to the German soldier? That all of Denmark would be the king’s bodyguard?”
「パパ、あの少年がドイツ兵に言ったのを覚えてる?『デンマーク中の人が王様のボディーガードだ』って。」
すると父は、優しくこう答えます。
“I have never forgotten it.”
「忘れたことなんてないよ。」
そして Annemarie は、静かに決意を込めて言うのです。
“Now I think that all of Denmark must be bodyguard for the Jews as well.”
「デンマーク中の人が、ユダヤ人のボディーガードになるべきだって、思う。」
この物語は、戦争や迫害の残酷さを背景にしながらも、武力で対抗するのではなく、human decency(人間らしさ・良心) のために立ち上がり、勇気を持って行動する、というメッセージを放っています。
実際に、デンマーク国民が、文字通りユダヤ人の“ボディーガード”となり、約7,000人以上のユダヤ人をスウェーデンへ逃がした史実に基づいている点も、強く胸に迫ります。
果たして彼女たちは親友の Ellen を無事に救えるのか。ページをめくる手が止まらず、
また、私自身も「自分は、自分の命を懸けて、迫害されるユダヤ人の友人家族を守るために行動できるだろうか」と、問いかけずにはいられませんでした。
ヨーロッパの小さな国デンマークがいかにして、第二次世界大戦という恐怖の時代に人間らしさを守り抜いたか、その深い物語に心を寄せることができ、英語多読の訓練以上に視野を広げてくれる一冊です。