外国人と一緒に働く機会が増えた今、誰もが一度は疑問に思ったことを、Erin Meyer氏 は豊富な事例とデータを使ってとても丁寧に、客観的に説明しています。
印象的だったのは、日本的な意思決定プロセス――稟議(ringi)の説明。
「これを英語でこんなふうに説明できるのか」と、シンプルで的確。
This is a management technique in which low-level managers discuss a new idea among themselves and come to a consensus before presenting it to managers one level higher. The next higher-ranking managers then discuss the new idea themselves and arrive at their own consensus. By the time a ringi document has made the round and all people involved in a decision have had a chance to give input and are in agreement, the end result is that the responsibility is spread out among many individuals rather than being concentrated with one or a few.
「まず現場レベルのマネージャーたちが新しいアイデアを話し合い、合意形成をしたうえで、ひとつ上の階層のマネージャーに提案する。次の階層でも同じように、そのマネージャーたちがアイデアを検討し、自分たちなりの合意に至る。
こうして稟議書が関係者のもとを一巡する頃には、意思決定に関わるすべての人が意見を述べ、合意している状態になる。
その結果、責任は一人やごく少数に集中するのではなく、多くのメンバーに広く分散されるのだ。」
日本の職場では当たり前に行われているプロセスも、こうして言語化されて、国際的な視点で見ると、その特徴が他国との比較の中でよりくっきり浮かび上がります。
人々は、自分の社会の常識に基づいて意思決定の期待を抱くため、他者の行動を効率悪いな、などと本能的に反応してしまうことがあります。
私もかつて、海外出張に行ったとき、アメリカ人に「日本企業は本当に決断が遅いから、例えばアメリカが最新のiPhone15だ!って時に、まだiPhone6辺りで決断できないでいる、感じ」笑、
と言われたことあります。
私たちは、「自分の文化が意思決定に用いている仕組み」にすら、必ずしも気づいておらず、考えずにただ思考のパターンに従っているだけなのです。
異文化や、異文化マネジメントの疑問がストンと腑に落ちる一冊。