2008年に映画化もされたこの作品は、若者クリストファー・マッカンドレスが、
裕福で恵まれた人生を自ら手放し、社会から距離を取って放浪の旅に出た実話を描いたノンフィクションである。
彼は、物質的な豊かさや社会的成功の裏にある偽善や不正に強い嫌悪感を抱き、
正しく生きることを、自分の生き方そのもので証明しようとした。
その姿勢には、トルストイに影響を受けた禁欲的な価値観と、
善悪に対して一切の妥協を許さない厳格さがあった。
彼は社会の周縁に身を置き、極度に貧しい人々と同じ場所で生きることを選ぶ。
それは現実から逃げるためではなく、
自分が信じる理想に、生活を合わせようとする試みだった。
しかし、彼の強い理想主義は現実や自然の厳しさと折り合うことができず、
最終的にアラスカの荒野で命を落とす。
著者ジョン・クラカワーは、この出来事を
無謀な若者の失敗としても、英雄的な行為としても、断ずることなく
「なぜ彼は荒野へ向かったのか」を丁寧に掘り下げていく。