ポルトガル語で書かれたこの作品は、世界的ベストセラーとして英語でも広く読まれている一冊。舞台はスペイン南部アンダルシア。羊飼いの少年が、不思議な夢を見たことをきっかけに、「自らを王だと名乗る老人」との出会いを経て、宝物を探す旅に出ます。
少年は単身で船に乗り、アフリカ大陸へと渡り、やがて砂漠を越えてピラミッドを目指す冒険へ。旅の途中、珍しい剣に心を奪われている隙に全財産を失い、途方に暮れますが、その時こう考えるのです。
After all, what he had always wanted was just to know new places. It hurt him a bit to think about it, but he had never seen one like it before. As he mused about these things, he realized that he had to choose between thinking of himself as the poor victim of a thief and as the adventurer in quest of his treasure. “I’m an adventurer, looking for treasure,” he said to himself.
ずっと望んでいたのは、ただ新しい場所を知ることだったのだ。全財産を取られたこと、胸が痛んだ。でも、こんな場所は今まで見たことがなかった。
思いを巡らせるうちに、気がついた。自分は泥棒にやられた哀れな被害者として生きるのか、それとも宝物を探す冒険者として歩き続けるのか、どう認識するのかは自分の選択なのだ。
「そうだ、僕は冒険者なんだ。宝物を探しに来たんだ」
彼はそうつぶやき、自分自身に言い聞かせた。
このように、物語には哲学的で心に響くフレーズが最初から随所に登場し、考えさせられます。タイトルの『Alchemist(錬金術師)』が物語とどう関わってくるのか、少年の冒険はどこへ向かうのか…ページをめくる手が止まらなくなります。
ページ数もそこそこあるので、英語多読の最初の一冊というよりは、児童書などにある程度慣れてきた初中級者の方におすすめ。宗教や人生観、夢を追うことの意味、夢を追わないことの末路など、読み終わったあとにも余韻が残る、深みのある一冊で、読み終わったあとすぐにもう一度読みました。