この本は、ミャンマー(当時はビルマ)出身のアウンサン・スー・チー氏の人生を、英語でやさしく読みやすくまとめた一冊です。
1945年に英国領ビルマに生まれたスー・チー氏は、1947年に父を暗殺で失い、1948年にミャンマーはイギリスから独立します。その後、彼女は軍事政権下で非暴力による民主化運動のリーダーとなり、長い間、自宅軟禁(ハウスアレスト)の生活を送ります。
この本で特に印象的だったのは、夫であるイギリス人学者マイケル・アリス氏の存在です。スー・チー氏が国内で自由を奪われている間、夫はヨーロッパ各国に働きかけ、彼女の活動を世界に広めようと尽力します。その結果、スー・チー氏はノーベル平和賞を受賞しますが、自宅軟禁中だったため授賞式には出られず、夫と2人の息子が代理で受け取りました。
その後も家族との再会は許されず、夫マイケル氏はがんを患い、死期が迫っても彼女に会うことはできませんでした。「一度出国したら、二度と祖国に戻れない」と言われた彼女は、夫のもとへ行くことを断念します。
祖国の民主化や、自由と引き換えに、最愛の人との時間を失う──その選択の重さと苦しみは想像を絶します。けれども、マイケル氏の支えがあったからこそ、彼女の非暴力運動は世界に届いたのだと、この本は静かに教えてくれます。
国を越えた夫婦の愛、家族の絆、そして信念の力に胸を打たれる一冊です。
そして何より、日本ではあまり知られていない(私が知らないだけかもしれませんが)世界の偉人たちに触れられることは、英語多読の大きな魅力のひとつだと感じました。