ドラマ『離婚弁護士』を見直して思ったこと
天海祐希さん主演のドラマ『離婚弁護士』(2004年放送)を、約20年ぶりに見直しました。
離婚にまつわる様々な悩みを抱えた女性たちが法律事務所を訪れ、東大法学部卒の美人で優秀な弁護士(天海祐希)が、論理的に(時に悪事を暴いて)、女性の悩みを解決する――そんな1話完結型の物語。
1話完結型の物語で、勧善懲悪で痛快でユーモアも涙もあり、面白くて一気見してしまいましたが、ドラマに登場する女性たちが直面している「悩み」そのものには、どこか古臭さを感じましたので、その背景を考えてみました。
2004年当時の女性の悩み
ドラマ放送2004年当時、40〜50代の女性たちが直面していたのは「キャリアか結婚か」という二択の壁でした。
- キャリアを選んだ女性:男性と肩を並べて働く代わりに、結婚や子どもを持たないことへの葛藤や、離婚して親権を手放したことへの悔い
- 結婚を選んだ女性:夫が若い恋人を作ったり、同世代の未婚キャリアウーマンが輝いている姿を見て、「キャリアを捨てて家庭におさまらなければよかった」と後悔
こうした悩みが生まれた背景には、戦後から2000年代までの制度的変化があります。
高度成長期と専業主婦モデルの誕生
戦後の民法改正で家制度が廃止され、核家族化が進むと、高度経済成長期には「夫が会社員として稼ぎ、妻は家庭を守る」というモデルが“標準世帯”として制度的に後押しされました。
- 1947年:扶養控除の導入により、家族を扶養する世帯の税負担が軽減
- 1961年:配偶者控除の導入で、専業主婦を持つ世帯の税制優遇が強化
こうして「専業主婦モデル」は、戦後の制度と経済成長がつくり出した時代の産物となりました。
男女雇用機会均等法とキャリア女性の登場
1985年には男女雇用機会均等法が施行され、女性も職場での昇進やキャリア形成の権利を制度的に保障されるようになりました。
これにより、女性は家庭におさまるだけでなく、仕事での自己実現も選べる時代になり、「キャリアか結婚か」という二択の悩みが生まれやすくなったのです。
現代の働き方と新しい葛藤
しかし、現在、日本では専業主婦世帯と共働き世帯の数が逆転しています(下記の図参照)。厚生労働省の統計によれば、1980年代には専業主婦世帯が多数を占めていましたが、近年では共働き世帯が増加し、専業主婦世帯を上回っています。
この変化は、女性の社会進出や働き方の多様化を反映しています。
今は、「キャリアか結婚か」の2択よりは、「どう両立していくか」がよりリアルな課題です。
時短勤務の女性は、限られた時間内で効率よく仕事を終わらせることに必死で、残業代がつかない場合でも超過勤務して業務をこなすこと(サービス残業)があります。
また、フルタイム勤務の女性からすれば、「本来ならもう一人雇えたはずなのに、時短勤務の人がいるせいで自分に業務が回ってきている」と感じることもあり、しわ寄せ感や不公平感が生まれる――こうした新しい摩擦が、現代ならではの悩みです。
多様化する選択肢
さらに今は、そもそも「結婚しない」という選択をする人も増えています。法律的な整備は途上ですが、同性婚やパートナーシップ制度も広がり、また、晩婚化も進んでいます。20年前より女性の生き方は多様化し、「結婚かキャリアか」という二択に縛られない選択肢が広がりました。
悩みの背景は個人だけの問題ではない
こうして振り返ると、「離婚」や「キャリアと家庭の葛藤」というテーマは同じでも、その背景には常に制度や社会の構造の変化があり、悩みの形も時代ごとに変わってきたのだと実感します。
個人の能力の問題かと思っていましたが、振り返ってみると、意外と社会や環境の影響を受けているのだな、と感じました。
そんな風に、体感しつつ俯瞰しつつ、振り返る年齢になったな、と思えたドラマでした。