著者とは同世代で、同じ様に氷河期に就活をして、同じ時代を生きてきたのに、まったく対照的な生き方をしてきたのだな、と考えさせられる。
phaさんは、「すべてのものが移り変わっていってほしかった20代、30代は、怖いものが何もなかった」と書き、さらに「あの頃は喪失感さえ娯楽だったが、今は今の生活に執着が出てきて、それを失う怖さや将来への不安がある。ようやくみんなの気持ちが分かるようになった」とも語っている。
また、「かつては、どこか新しい場所に住むことで新しい自分に出会えるかもしれないと思っていたけれど、今は、別の場所に行ったところで自分自身はあまり変わらないだろうと思う」とも書いている。
それに対して、対照的に私は、20代・30代のすべてが怖くて、恐怖を抱えながら生きてきた。転職や留学はとても刹那的な生き方に思えた。(今思えば、自分の視野が狭かっただけなのだけど)
だからこそ、退職も転職も怖くて、一つの会社にしがみつき、気づけば20年以上も同じ場所で働いていた。
20年以上もその“執着”を抱えて生きてきて、想像よりも若い年齢で父が要介護となったことをきっかけに、「自分の健康寿命がいつまでなのか分からない、このまま好きでも嫌いでもない仕事に埋もれて人生を終えたくない」と思い、会社を辞めた。
いまは、ようやく「執着」を手放し、個人事業主として、自分の好きなことだけをして生きている。
不安がまったくなくなったわけではないけれど、
もし金銭的に困ることがあれば、また好きでも嫌いでもない仕事を淡々とすればいい、
そんな“開き直った自信”のようなものが、いまの私を支えている。
住む場所についても、かつては「定住」を前提に30代でマイホームを購入したが、
今はそれを賃貸に出し、海外を含めてさまざまな場所に住みながら、
新しい発見をし、新しい人々、新しい気づきを得て、新しい自分に出会いたいと思っている。
そして思う。
phaさんのように、自由に好きなことだけをして生きてこられた人でも、
そして、私のように会社員として、好きでも嫌いでもない仕事を20年以上続けてきた人でも、
40代も半ばになると、誰もが同じように人生を振り返り、
「自分の価値観が古くなった」と感じたり、
ミッドライフ・クライシス的な揺らぎを覚えるものなんだな、と思わせてくれる本だった。
