「生まれたことが犯罪だった」――そんな言葉、信じられますか?
これは、南アフリカ出身の人気コメディアン、トレバー・ノアの回想録のタイトルです。原題は Born a Crime。
でも、読んでみるとこの本は、単なる“壮絶な生い立ち”の話ではありませんでした。
もっと深くて、もっとあたたかくて、そして何より、“希望”に満ちた一冊でした。
https://www.netflix.com/jp/title/81228515
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「アパルトヘイト」って何だったの?
南アフリカの歴史にあったアパルトヘイト(Apartheid)。
「アパルト(分離)+ヘイト(憎悪)」という言葉の通り、白人が黒人を完全に分離・支配し、
社会・教育・労働・移動…あらゆる面で黒人を徹底的にコントロールする差別の制度でした。
その時代、白人と黒人の恋愛や結婚は法律で禁止。
トレバーはそんな中、黒人の母と白人の父の間に生まれた、“存在が違法”な子どもだったのです。
この本を読んでいて、何度も心を打たれたのが、トレバーの母・パトリシアの言葉です。
「自分の過去に学びなさい。過去は嘆かないの。
苦しみは人を研ぎ澄ますもの。
恨んだら、自分の人生を失ってしまうわよ。」
アパルトヘイトという、普通なら誰でも憎しみに染まってしまいそうな過去の中で、
彼女は“恨むな、学べ”と言い切ったんです。
そして、この本のすごいところは、そういう重たいテーマを、
トレバーがユーモアたっぷりに語っているところ。
生きるのが必死だったはずの少年時代を、笑って話せる強さ。
言葉が「武器」であり、「パスポート」だった
トレバーは多言語を操れるバイリンガル、いやマルチリンガル。
ズールー語、英語、アフリカーンス語…彼は「言葉の力」で、自分の居場所を広げていった。
彼にとって言葉は、ただのツールではなく、差別を超えるための鍵でした。
それを見て、あらためて思いました。言葉は、自分を守り、つなげ、自由にしてくれる。
この本が教えてくれたこと
「生まれた環境は選べない。でも、生き方は選べる」
それを教えてくれるのがこの本です。
怒りや恨みに飲み込まれるのではなく、
それらを自分の糧として、どうやって前に進むか。
トレバー・ノアの『生まれたことが犯罪』は、自分の半生を通して
過去の重さより、未来の可能性を語る本です。