ブラッシュアップライフ

香港、まっすぐ進めない海の上で、自由を知る

帆船での航海のすごさを、肌で感じながら思いをはせる

先日、香港の海で、動力なし・8人乗りのヨットに乗る機会がありました。
エンジンも使わず、ただ帆に受けた風だけで進む。そんなシンプルな方法で、私は初めて、自然とひとつになって海の上に浮かんでいる感覚を味わいました。

動力付きの船には今まで何度も乗ったことがあります。
でも、そのときは「海上の交通手段のひとつ」というくらいの感覚で、特に歴史に思いを馳せることはありませんでした。
ところが今回は違いました。
帆だけで進むという体験は、もっと原始的で、SUP(スタンドアップパドルボード)サーフィン波に乗る感覚にもとても近いなと感じました。

どちらも、自然の力を受けて進む体験であり、エンジンの力ではなく、自分の体やバランスを頼りにするところが共通しています。
動力なしのヨットで感じる風の流れ、波の揺れ、そして海との一体感は、どこか身近な感覚でもあり、心地よい自由を与えてくれるものです。

命がけで新大陸を目指した人たちへの、心からの敬意

帆船での航海は、思っていた以上に過酷でした。
突然の風や雨にヨットが大きく傾き、びしょ濡れになりながら必死でバランスを取る。
(同行していたベテランの方々は「これくらいじゃ沈まないよ」と笑っていましたが)
これよりもっと大きな嵐を乗り越えて、何カ月も、時には何年もかけて、大海原を越えた人たちが何百年も前にいたのだと思うと──
本当に、ただただ圧倒されるばかりでした。

恐怖や不安を超えて、命をかけて、前に進もうとした彼らの欲望、好奇心、勇気は、想像を絶します。

技術とテクノロジーの進歩に、改めて感謝する


エンジンで自由に動き、GPSで現在地が分かり、スマホで香港の海の上から日本に電話もできる。
これらはすべて、私たちが日常的に使っている技術の進化の賜物です。

人間は、人間はエンジンを作り、船を作り、GPSを開発し、歴史を切り拓いてきた。
そのすべての努力が、今私たちの生活を支えていると思うと、ただ感謝する気持ちだけでなく、人間の好奇心と英知に対する深い感動も湧いてきます。


かつては未知の海を進むために命を懸けた船乗りたちが、その後の技術革新を生み出し、今の私たちに繋がっている。その歴史の積み重ねがあったからこそ、今こうして海の上でも安心して過ごせるのだと、心から感動せずにはいられません。


けれど、どれだけ時代が進んでも、自然の力の大きさと、美しさと、畏れを前にしたときの感覚は、きっと変わらない、そんな風にも感じました。

人生もまた、帆船のように進んでいく

この8人乗りのヨットも、ただまっすぐには進めない、ということを初めて知りました。
風の向きに合わせて、何度も角度を変えながらジグザグに進むしかない。
それが少し、人生に似ているなと思いました。

思い通りにいかないからこそ、工夫したり、時には休んだりしながら進んでいく。
そんな不自由さを受け入れて、ジグザグ変化して楽しむことが、本当の航海、

──人生を楽しむコツなのかもしれません。

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