国境も、試験の枠も超えて、かつての『暗記』を『驚き』へ。

英語多読 Born a Crime   (著) Trevor Noah 

Born a Crime: Stories from a South African Childhood (One World Essentials)

Trevor Noah’s unlikely path from apartheid South Africa to the desk of began with a criminal act: his birth. Trevor was born to a white Swiss father and a black Xhosa mother at a time when such a union was punishable by five years in prison. Living proof of his parents’ indiscretion, Trevor…

「存在そのものが犯罪だった」――そんな衝撃的な告白から始まる本書は、世界的なコメディアンの自伝でありながら、現代史の闇を笑いと知恵で照らし出す、希望に満ちた物語です。

邦題:生まれたことが犯罪だった―南アフリカ、アパルトヘイト、そして母

本書は『生まれたことが犯罪だった』という邦題で知られています。白人の父と黒人の母の間に生まれたトレバーは、当時の南アフリカの法律(アパルトヘイト)下では「違法な存在」でした。外で親と手をつなぐことすら許されなかった過酷な生い立ちが、瑞々しい感性で描かれています。

作者名:トレバー・ノア(Trevor Noah)

アメリカの人気番組『ザ・デイリー・ショー』の司会者として知られるトレバー・ノア。彼は、差別や貧困という重いテーマを、決して被害者意識に浸ることなく、エンターテインメントへと昇華させ、世界中の読者に勇気を与え続けています。

英語レベル:大学英語(英検準1級〜レベル)

読み物としての面白さは抜群ですが、多読素材としては中上級者向けです。

  • 語彙数:約90,000語
  • 英語レベル:大学英語レベル 分量はありますが、Netflixのショーで見せるような彼の独特なリズムとユーモアが文章にも溢れているため、一度引き込まれるとページをめくる手が止まりません。

英語圏での対象年齢:14歳以上(Young Adult 〜 Adult)

思春期の葛藤や社会問題、歴史的・倫理的な深みがあるため、若者から大人まで幅広く読まれています。

物語の年代と舞台の場所:1980年代〜90年代の南アフリカ

物語の舞台は、アパルトヘイト末期から崩壊直後の南アフリカ。教科書で習う南アフリカの歴史教育とは異なり、そこに生きた少年の視点を通した「リアルな体験」として、当時の社会構造を理解することができます。

ジャンル:自伝・ノンフィクション・コメディ

過酷な環境でのサバイバルを描いた自伝ノンフィクションでありながら、最高級のユーモア小説のようでもあります。

英語多読で「視点」をアップデートする:ヒトラーと名付けられた友人

本書の中で、日本人読者が最も衝撃を受けるエピソードの一つに、トレバーの友人に「ヒトラー」という名前の少年がいた話があります。欧米の価値観、あるいは、私たちが受けてきた教育の枠組みでは、「ヒトラー」は絶対悪の象徴です。

しかし、当時の南アフリカの黒人コミュニティにおいて、その名前が持つ意味は全く異なっていました。彼らにとって、ヒトラーは「自分たちを苦しめる欧米列強を震え上がらせた、強い男」という認識なのです。

アパルトヘイトという目の前の「差別」を生きる人々にとって、ヨーロッパでの惨劇は、自分たちが受けている差別ほどには「自分たちの物語」ではなかったのです。

  • 教育の非対称性:欧米が考える「正義」と、南アフリカの黒人が生きる「現実」の乖離。
  • 無意識のバイアス:私たちが抱く「歴史の常識」が、いかに欧米中心主義的であるかへの気づき
  • 言語と文脈のズレ:ダンス大会で「Go, Hitler!」と応援する少年たちと、凍りつく白人観衆。この決定的なコミュニケーションの断絶を、トレバーは笑いに変えながらも、痛烈な文明批評として描き出します。

「絶対悪」を相対化する多読の醍醐味

トレバーの言葉を通してアパルトヘイトを読み解くことで、世界の見え方はガラリと変わります。それは「人種差別を克服する本」として感動するだけでなく、自分が依って立つ「正義」や「歴史」が、いかに特定の視点から作られたものか、を突きつけられる経験です。

英語という「世界標準」の言葉を読みながら、自分たちが立っている「日本人の視点」のさらなる外側へと踏み出すこと。これこそが英語多読の真の醍醐味であり、大人が英語を学ぶ大きな価値と言えるでしょう。

最強の母パトリシアと「生き抜くための武器」

本書のもう一人の主人公は、トレバーのパトリシアです。彼女は教育と信仰を武器に、息子に「自由な精神」を植え付けました。トレバーが複数の言語を操り、言葉の壁を越えてどの集団にも属することができたのは、母が授けた「生き残るための知恵」があったからです。

読後感は驚くほど爽やかで、未来への希望に満ちています。Netflixのショーに感動した方はもちろん、世界を多角的に捉え直したいすべての人に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

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