『行け!!南国アイスホッケー部』久米田康治の“暴走するギャグセンス”が詰まった初期代表作

今回紹介するのは『行け!!南国アイスホッケー部』です。
作者は久米田康治さん。

この作品をひとことで言うなら、「アイスホッケー漫画の皮をかぶった、ほぼ全力ギャグ漫画」です。

タイトルだけ見ると、スポーツ漫画っぽいですよね。
「南国でアイスホッケー?」という時点でかなり変ですが、読み始めるとすぐに分かります。
これはアイスホッケーの勝敗を真面目に追う漫画ではありません。

むしろ、アイスホッケーという設定すら途中からほとんど建前になっていくタイプの作品です。
その脱線ぶり、勢い、くだらなさ、そして妙な中毒性こそが、この漫画の最大の魅力です。

今回は、そんな『行け!!南国アイスホッケー部』の魅力を、自分なりの視点で書いてみたいと思います。

目次

この作品はどんな漫画か

『行け!!南国アイスホッケー部』は、南国の高校にあるアイスホッケー部を舞台にしたギャグ漫画です。

主人公は、カナダ帰りの天才アイスホッケー少年・蘭堂月斗。
彼が南国の高校にやってくるところから物語は始まります。

……と書くと、いかにも王道スポーツ漫画の導入に見えます。

天才主人公。
弱小部活。
仲間との成長。
ライバルとの対決。
全国大会への道。

普通ならそういう展開を期待するところですが、この作品はそこに真っ直ぐ進みません。
むしろ最初からどんどん横道にそれていきます。

アイスホッケー部であることは間違いないのに、試合よりもギャグ、部活よりも下ネタ、成長よりも暴走。
この割り切り方がすごいです。

久米田康治さんといえば、後年の『かってに改蔵』や『さよなら絶望先生』で知られる作家ですが、その原点にある“暴走する言葉遊び”や“ナンセンスなギャグ”の勢いを感じられる作品でもあります。

ここが面白い

この作品の面白さは、まず何よりもテンポです。

とにかくギャグの回転が速い。
くだらないネタ、下ネタ、勘違い、顔芸、勢いだけの展開。
それらが次々に投げ込まれてくるので、深く考えるより先に笑わされる感じがあります。

今読むと、時代を感じる表現もかなりあります。
むしろそこも含めて、90年代ギャグ漫画の空気が濃く出ている作品です。

この頃の少年漫画には、良くも悪くも“勢いで押し切る強さ”がありました。
設定の整合性よりも、今このページで笑えるか。
キャラクターが成長するかよりも、次のコマでどれだけバカなことをするか。

『南国アイスホッケー部』は、その感覚がかなり強い漫画です。

そしてもう一つ面白いのは、スポーツ漫画のフォーマットをわざと崩しているところです。

普通のスポーツ漫画なら、競技への熱意、努力、友情、勝利が中心になります。
でもこの作品では、アイスホッケーはあくまでギャグを発生させるための舞台装置に近い。
「いや、アイスホッケーしろよ」と思いながら読むのが、ある意味で正しい楽しみ方です。

この作品が刺さる人

この作品は、こんな人におすすめです。

90年代の少年サンデー系ギャグ漫画が好きな人。
久米田康治作品の原点に触れてみたい人。
勢い重視のナンセンスギャグが好きな人。
細かい整合性よりも、くだらなさを楽しみたい人。
昔の漫画特有の“やりすぎ感”まで含めて味わえる人。

逆に、真面目なスポーツ漫画を期待して読むと、かなり戸惑うと思います。
熱血アイスホッケー漫画を探している人には、正直おすすめしにくいです。

ただ、ギャグ漫画として読むなら話は別です。
「なんでこうなるんだよ」とツッコミながら読むタイプの漫画としては、かなり強い作品です。

私が特に好きなポイント

個人的に好きなのは、この作品の“遠慮のなさ”です。

今の漫画は、構成もキャラクター設計もかなり洗練されています。
伏線、世界観、テーマ性、読後感。
どれも丁寧に作られている作品が多いです。

それはそれで素晴らしいのですが、『南国アイスホッケー部』には、それとは真逆の魅力があります。

とにかく目の前の笑いに全振りする。
設定が多少壊れても気にしない。
キャラクターが変な方向に転がっても止めない。
読者にツッコませる前提で、どんどん先に進む。

このライブ感がたまりません。

そして、久米田康治さんの後年の作品を知ってから読むと、また違う面白さがあります。
『かってに改蔵』や『さよなら絶望先生』では、皮肉、時事ネタ、言葉遊び、構造的なギャグがどんどん洗練されていきます。

その前段階として、『南国アイスホッケー部』には、若さと勢いで突破している感じがあるんです。
完成された久米田作品というより、暴走している久米田作品。
そこがいい。

※ここから少しネタバレを含みます。
この作品は、連載が進むほどアイスホッケー要素がどんどん薄れていきます。
でも、それが欠点というより、むしろ作品の個性になっています。
タイトルと中身のズレすらギャグになっているような漫画で、「スポーツ漫画のふりをしたギャグ漫画」として振り切れていくところが、この作品らしさだと思います。

まとめ:なぜ今すすめたいのか

『行け!!南国アイスホッケー部』は、真面目にアイスホッケーを描く漫画ではありません。
でも、90年代ギャグ漫画の勢いを味わう作品としては、かなり記憶に残る一作です。

今読むと、古さもあります。
ノリが強すぎる部分もあります。
人によっては「これは今だと攻めすぎだな」と感じるところもあると思います。

でも、その時代のギャグ漫画が持っていた熱量、荒さ、勢い、くだらなさ。
それらを丸ごと楽しめる人には、かなり刺さる作品です。

久米田康治さんの作品が好きな人なら、原点を知る意味でも読んでみる価値があります。
『さよなら絶望先生』のような完成度の高い言葉のギャグとはまた違う、初期ならではのパワーがあります。

スポーツ漫画だと思って読むと裏切られる。
でも、ギャグ漫画だと思って読むと妙にクセになる。

そんな、タイトルからしてズレていて、中身も全力でズレ続ける漫画です。

気になった方は、ぜひ一度手に取ってみてください。今回は『行け!!南国アイスホッケー部』を紹介しました。
これからも「明日、誰かにすすめたくなる漫画」を、1日1作品ずつ気ままに書いていこうと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA